世相を反映してか、ディスカウントショップが大盛況だそうだ。扱うモノも食品にはじまり、生活雑貨、ブランド品、スポーツ用品、家電製品、コンピュータに至るまで、さまざまである。人気の理由はとにかく価格が安いこともあるが、掘り出し物に出くわすことにもあるようだ。かくいう私も「エッ、これがこの値段!」と、年がいもなく興奮してしまったことが何度もある。掘り出し物を見つけたときは、誰しも何とも言えない幸せな気分になるものだ。
「何か掘り出し物はありませんか?」と、お客様から訊かれることがよくある。そのたびに返答に窮し、そして考え込んでしまう。不動産の掘り出し物とは一体何なのか、と。
「掘り出し物」を辞書で引くと、「意外にも安く手に入れた品」とある。つまり、本来安くなる理由のないものを安く手に入れることが「掘り出し」なのだ。とすれば、立地条件が良くて、広く、新しく、奇麗と、すべての条件が整った物件(つまり安くなる理由のない家)が相場より安い価格で売られていなければ、本来の意味での掘り出し物とはいえない。格安でも、古かったり、不便な場所にあるといった安くなる理由がある物件は、掘り出し物ではないのだ。
ディスカウントショップの価格破壊の秘密はいくつもあるようだが、その一つに「ワケあり」商品の仕入れがある。倒産品などを、通常のルート以外から仕入れて売るわけだから、安くなるのは当然だ。そしてそういったモノのなかに、ときとして掘り出し物が埋もれているのである。
では、不動産にそんなものがあるのだろうか? なくはない。いわゆる競売物件がそれだ。
これまた世相を反映してか、競売物件市場が盛況である。以前は不動産業者のみを対象としたものであったが、一般の方の参入も許されたことも現在の活況に拍車をかけているようだ。これら競売物件とは言うまでもなく、やむを得ない理由で手放された不動産のことである。なかには、誰もが知っている(憧れる?)一等地に建つ物件も見受けられる。そう、競売市場は本来安くなる理由のない物件が安く売られる、掘り出し物を求めている人にはとても魅力的なところなのだ。
「言いたい放題」の其の二でも触れたが、競売物件は10年前には縁起が悪いと見向きもされなかった。しかし、現在は合理的にものを考える人が増えたようだ。また、絶対に有り得ないと考えられていた大手企業や銀行の破綻が相次いだことも、倒産や競売に対する意識を大きく変えたようだ。
希望物件を競り落とすのは、そうそう易しいものではない。一般の方が手を出すには面倒なことが多く、リスクもなくはないが、どうしても「掘り出し物がほしい」という方には一考の余地があるといえる。
しかし、あくまでも家を買うということを覚えておいていただきたい。掘り出し物が潜んでいるという共通項はあるにせよ、ディスカウントショップと競売物件市場とではワケがちがう。買った後で「やっぱりここは気に入らない」と思っても返品はきかないことを、どうぞお忘れなく。
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