先日、何気なく見ていた雑誌で、アメリカの某有名女優が離婚したときの財産分与をあらかじめ取り決めてから結婚するという記事を読んだ。まずはその額に目を剥いた。我々の想像しうる数字とは、ゼロの数がいくつも違った。
そして何より、結婚するときすでに離婚を想定していることに興味をひかれた。“さすが契約社会の国アメリカ、日本人とはやはりモノの考え方が違う”と、思われる方も多いことだろう。しかし日々の不動産業務を通して、我が国の結婚事情が徐々にではあるがアメリカナイズされてきているのを感じるときがある。
新婚夫婦が新居購入の手続きを済ませ、後は入居するだけとなったころ、私のところにこんな内容の電話がかかってくる。「あの、もし離婚したら家の持ち分はどうなるんでしょうか? いま、キッチリさせておくことはできませんか? あっ、電話があったことは相手には内緒にしておいてくださいね」。
電話をかけてこられるのは双方の親御さん、もしくは新婦さんが多く、新郎さんはほとんどいない。親御さんからご相談を受けるのはまだしも、新婚ホヤホヤの奥さんから「離婚」という言葉を聞くとやはり面食らってしまうもので、対応に戸惑うこともある。お断りしておくが、これは何か訳ありで離婚を企んでいるといった人たちではなく、ごく普通に(つまり幸せな)新婚生活を始めようとしている人たちの話だ。
一昔前なら、結婚直後に離婚にまつわる話を持ちだすなんて、想像もできないことであった。しかし女性の社会進出が活発になるなど、我が国の社会が多様化するにつれ結婚に対する意識も大きく変わってきたようだ。また、万が一離婚して金銭を巡る泥沼の争いをするぐらいなら、最初にきちんとしておいたほうがいいと思うのは当然のことかもしれない。
しかし、私は何も離婚を想定して結婚せよと言っているのではない。ここで言いたいのは、結婚という大事業に取り組むためには、互いに責任と自覚をもつことが何より大切ということだ。新居購入をはじめとして、結婚には大金が必要となる。その金を「何とかなるモノ」「何とかしてもらえるモノ」といった安易な気持ちで考えていると、時として取り返しがつかなくなることを覚えておいてほしい。特に新郎諸君にはだ。
夫婦の財産は、二人で一緒に築いていくものだ。そしてそれは、数字ではあらわせない価値をもつものだ。スイートホーム購入の前に、二人でどんな財産を築いていくか、ゆっくり話し合ってみてはいかがだろう?
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