マンション建設の最近の傾向で、最も顕著なのが都心回帰である。９０年代後半から、それまで周辺部に多く建てられていたものが、京都でいうと烏丸通の四条から御池あたりにかけての街なかに建てられるようになった。
　では、一戸建て住宅建築のトレンドはなにか。それは二階建て回帰である。平成５年の建築基準法改正で木造建築が認可されたことを受け、三階建て住宅の需要が伸び続けていたが、ここに来て二階建て住宅が人気を盛り返している 。

　これらの現象にはふたつの共通した要因がある。ひとつが地価の下落。年々下がり続ける地価は、都心部でのマンション建設用地の調達を容易にした。蛇足だが、それらの土地の多くが整理された会社の跡地といわれ、都心部のマンション建設ラッシュはいわば未曾有の不況の副産物といえよう。
　一戸建て住宅建築でいえば、地価の下落によって一戸あたりの敷地面積を多くとれるようになった。土地に限りがあれば三階建てが得策なのだが、ゆとりがあればそうせずとも充分な建延面積を確保できる。故に二階建て住宅への回帰がはじまったというわけだ。

　もうひとつの要因は高齢化だ。都心部のマンションの住人にはお年を召されたご夫婦が多い。郊外の一戸建て住宅から移り住む方々も多いと聞く。なるほど、街なかならどこに行くにも便利でクルマもいらない。しかもマンションなら階段を上り下りする必要もないし、セキュリティもしっかりしている。ご高齢の方々にはいいことづくめだ。

　では、二階建て住宅がご高齢の方々に支持される理由はなにか。まずは、三階建て住宅に比べて階段の上り下りがラクという点。つぎに、土地にゆとりがあるため庭いじりを存分に愉しめることだ。弊社のお客様のなかにも、ご主人は野菜づくりに汗を流し、奥様はガーデニングに勤しむというご夫婦が増えている。庭いじりを愉しむために、都心のマンションから二階建て住宅にわざわざ引っ越されたご夫婦もいらっしゃるほどだ。
　また、これは一戸建て住宅すべてにいえるメリットだが、犬などの動物を伸び伸びと飼えることも大きい。ご夫婦でのふたり暮らしでは動物の存在は大きな励みとなり、さらには生き甲斐になるという。そのため最近ではペット（愛玩用動物）ではなく、コンパニオン・アニマル（伴侶動物）という呼び方がされているそうだ。

　悲しい性か、話を進めているうちに一戸建て住宅とマンションとの比較になってしまった。お断りしておくが、私はなにもマンションを頭ごなしに否定しているわけではない。お客様が納得してご購入され、快適に住まわれるのであれば私がとやかくいう筋合いはない。それは重々承知している。
　しかし、くどいようだが家は一生の買物。お年を召されてからのご購入であれば、いっそう慎重になっていただきたいと願っている。だからこそ、いろいろとしつこくいっているわけで・・・。まあ、昔気質の不動産屋のおせっかいと思って、笑ってお許しいただければ幸いである。